華恋ちゃんが家に帰った数日後の、
後日談である。


私は再び"幕末喫茶"に訪れていた。


ハマったワケじゃないんだから!!

と言うのも、一ノ瀬先輩のお母さんの手術は成功したようで、
もうバイトをする必要がなくなって、
もしかしたら辞めてるんじゃないかと思った次第である。


でも、そんな心配する必要はなかったみたいだ。


先輩は今日も変わらずに、
女の子に囲まれながら働いていた。

笑顔を作るのも大変そうだな…。

私は、なぜだか先輩がバイトを続けていることに安心を覚えていた。


「佐伯」


ボーッとパフェを食べていると、
後ろから声をかけられる。


振り返ると、
そこには着物に身を包んだ一ノ瀬先輩がいた。

目には眼帯ではなく、幕末っぽく包帯を巻いている。

着物がやたらと様になっていて、
まるで先輩のために作られたのかのように似合っていた。


「来てくれたのか」


先輩は柔らかい笑顔を向ける。

それは周りの女の子に向けていた笑顔ではなく、
私一人に向けられた優しい笑顔だった。


「先輩が辞めちゃってるんじゃないかと思って……」