「ねぇ、華恋ちゃん。なにか欲しいものとかない?行きたいところとか」
私はせめてものお礼として、
華恋ちゃんが帰ってしまう前に、
なにかプレゼントしようと思った。
「今は、お母さんが無事に手術を終えることが、願いです」
……よくできた子だ…。
本当に…先輩も含めて、一ノ瀬兄妹、恐るべし…。
「それはそうかもだけど…なにか、ない?」
私が再度聞くと、
華恋ちゃんは、ん〜と考え込んだ。
夕焼けに照らされた横顔が、
とても一ノ瀬先輩に似ている。
高い鼻も、整った唇も。
やっぱり兄妹なんだ、
と見入ってしまった。
「遊園地に…行きたいです…」
「遊園地?」
「はい。お父さんが死んじゃう前に、1度家族で行ったことがあるんです。それに、友達は夏休みいろんな所に家族で行っていて…羨ましくて…」
消えていく語尾に、私は息を呑んだ。
言われてみればそうだ。
小学4年生なんて、家族でいろんな所にお出かけして、楽しい思い出を作るに決まっている。
"羨ましい"
家族が羨ましい、そんな私の気持ちと一緒だった。
「じゃあ明日、私と一緒に、遊園地行こっか」
「いいの!?」
「うん、一緒に行こう」
その声に、華恋ちゃんは今まで見せたことのない子供の無邪気な笑顔で言った。
「ありがとう!すみれちゃん!」


