有紀に幕末喫茶に連れていかれるわ、
まさかあの一ノ瀬先輩を見つけてしまうわ、
散々な1日だった。
まだまだ頭の整理がつきそうにない。
「なんかあったのか?」
悠希が隣に座り頭を撫でてきた。
「疲れた〜」
「お疲れ」
悠希の手が背中と胸のあたりに回ってくる。
優しくギュッと抱きしめられた。
悠希に抱きしめられるのは、何回目だろう。
もう慣れすぎてしまって、
琉生君の時のようなドキドキはない。
悠希はもう兄妹っていうか、
そういう感じだから。
「俺は…すみれが遠くに行っちゃった気がして、すげぇ寂しい」
「えっ?」
ボソりと言われた言葉に聞き返したけれど、答えてもらえなかった。
「よし、俺も明日の準備するか」
温もりが遠ざかったと思ったら、悠希は伸びをして立ち上がった。
「明日、どこか行くの?」
「生徒会」
悠希は笑ってそう言うと、リビングを出ていってしまった。
シーンと静まるリビング。
私は上半身を起こすと、また物思いに耽った。
あの一ノ瀬先輩が……
信じられない。
と、その時、ガチャリと音を立てて玄関の扉が開いた。
一ノ瀬先輩だ。
私は、意を決して、リビングで一ノ瀬先輩が入って来るのを待った。


