「ねえ、何で天谷は私がこの時間帯にあの教室にいるって分かったの?」




これはさっきから不思議に思ってたこと。


普段の私なら、絶対に帰ってる。

それに優也くんの教室なんて今まで足を踏み入れたことがない。


それなのに天谷は私がいることを知ってるかのように現れた。




「んー、天才だからじゃね?」


「答えになってないんだけど」




特にそれに意味なんてないのかな?

でも部活もないなら天谷が学校にいる理由もないしな……。




「とにかく、さっさと美術室行くぞ」


「え、ちょっ、待ってよ天谷!」





そう言うと突然一人で駆け出した背中を、私は慌てて追い掛けた。




私が天谷を好きになる日が来るのかは、分からない。

それでも不思議と、天谷といれば、優也くんを忘れられる気がした。