「何がそんなに楽しいの」


「美沙ちゃんが私を嫌っていくのが、楽しくて仕方がないの」


「……歪んでる」




理解出来ない。

理解しようとも、したいとも思わない。


そんなの、分かりたくもない。




「そうね。あ、だから私のことを好きにならないのかな?」


「……なんの話」




それどころじゃなくて気付かなかったけど、窓が開いていたみたいで、吹き込んできた風がカテーンと私たちの髪を揺らした。

人差し指で舞った髪を耳に掛けると、お姉ちゃんは視線を窓の外へと向けた。




「ん?陽一くんの話よ」




そして私がその視線の先に追いつくよりも先に、お姉ちゃんはそう言った。


私たちが知ってる陽一なんて名前の人は、一人しかいなくて。

視線の先に何があるかなんて、さっき見たばかりだから、知ってる。


だけど今までそんな素振り見せなかった。

気付きもしなかった。

だって……嘘でしょ?




「お姉ちゃん、天谷が好きなの……?」