「ご、ごめんね金鞠。


で、えーっと…なに?」



さっき遮っちゃったからね。

悪いことしちゃった。




「あ、のね…


あたしを、ここに置いてください!」





「………へ?」



思わず目をパチクリしちゃったよ。

驚きすぎて。




「あたし、今、家…ないの…

だから…お願い!


掃除洗濯とかの家事から、肩揉み足揉み顔揉みやるから!


お願い…お姉さん……」




そんな金鞠に、私はふっと笑った。



そして、ソファの上で正座をして頭を下げる…いわゆる『土下座』姿の金鞠の頭をそっと撫でた。



「あったりまえじゃん!

引き取ったからには元々そのつもりだったって!



家事も、無理してやらせないよ…


おいで。


私だってこの家…ちょっと寂しかったから、さ」





………今までは、自分の家である屋敷は五月蝿く感じた。


鬼の人々の中には私を良く思わない人ももちろんいて、

陰口だってされてること…気付いてたし。




けど、その五月蝿さが良かったんだな、って。


そう思ったのは…ここに来て1ヶ月ぐらいだった。




良く思わない人もいれば、私を受け入れてくれる人もたくさんいた、あの家が。



大好きだったんだなって…



失って初めて気付く…その言葉に偽りはなかったんだなって思った。





「ようこそ、我が家へ。


……金鞠」



「!お姉さんー!」



首元へ飛び込んでくる金鞠。

ぎゅーって抱きしめて、く、れる…



「く、苦しいなぁ…」


「あ!ごめんなさい!」


「大丈夫大丈夫。

それに、お姉さんも嫌だし…霧花、で良いよ?」



私の言葉にまた金鞠は、



花のような笑顔を見せたのだった。