「…私がいなくなったら、皆は混乱する。


私があの場からいなくなったら、皆は誰を頼りにすればいいか分からなくなる。



あの日、私が逃げていたら…



鬼の村は、滅んでいた」






「…だから族長になることを決めたの?」






私はやっぱり、笑ってうなずいた。





「…やっぱり、姫様ってガラじゃなくなったね霧花は」





「今はお嬢様なんかじゃない。一応族長ですもの」





「…けどさ、霧花」





妖矢は私に笑いかけた。



その笑みは、なんだか…人を落ち着かせるような、不思議な笑顔だった。





「…もう我慢しなくて、いいんだよ」






妖矢の言葉に、強くうなずいた。