「…霧花。用意ができたよ」




「ありがと、妖矢」






…寒くなってきた秋のとある日。




私の18歳の誕生日が過ぎて、もう2週間が経った。






「…思い出してるの?」





外を見ながらぼーっとしてると、妖矢はそう聞いてくる。



私はその問いに…いつも少し笑いながら、黙って首を横に振るだけ。




…きっとバレてる。




それが嘘なんだ、ってことぐらい。







「ねぇ、妖矢」




「なに?」




「………ごめんね」





私が謝ると、妖矢も笑いながら首を横に振る。



あの日。



皆と別れた、あの日。








今でも鮮明に思い出す…







「霧花。あの日、君は…なぜ、ここに残ろうと決心したの?」





妖矢は私によくそのことを聞く。


私はいつも、その問いに笑って「さぁ?」と答えている。





「…今日ぐらい答えてよ」





……そうだね。



そう、心の中で返事をした。