「…これでいいの、妖矢」




「ありがとう、霧花。


これで皆…安心して暮らせるよ」





「……そうだね、皆……」







なぜ私が、鬼一族族長になることを決意したのか。



それは簡単だった。






「まあ、霧花が来て皆安心したんだ。

皆霧花があの幻と言われた術を使う少年といると知ったら、


皆滾っちゃって。鬼斬り陰陽師を滅ぼす、攻めるなんて話も出たけど。


これで大丈夫だね」






「…うん」






私がいなくなり、族長…お祖父様が亡くなったせいか、


鬼の皆は怒りと悲しみでできた恨みの矛先を鬼斬り陰陽師へと変えた。





…私が族長に一旦なれば、



皆が落ち着く。






そう考えての決断だった。







「…霧花、君は人間になりたいんだったね」





「…うん、そうだったね」





あれ?


そう言って妖矢は、不適な笑みを浮かべた。




「過去形なんだね?」