ビックリして、すぐに顔を上げた。




「あ、ごめんねお嬢さん」



「い、いえ、大丈夫です」




どうやら向こうから、お店に入ろうとした男の人がいたみたいだ。



ビックリしたぁ…と思いながら、顔も見ずにその人を横切った。




「久しぶりだね」






___ドクン









「………………え?」

















気付いた時には、人で溢れかえっている大通りにただつったっていた。



後ろには呉服屋。



ドクン、ドクン、ドクン…心臓が妙に早いテンポで鼓動する。



汗がだらだらと出て来て、気持ち悪い。




急に乱れる呼吸。



息が…息が、できない………!






胸元をぎゅっと、着物ごと押さえる。



はぁ、はぁ、はぁ…はぁ……!




助けて、


助けて、





逃げなきゃ。






逃げ、なきゃ……!






あの声が…来る………!









途端、目の前の景色がぐにゃりとまがった。



体の支えが急に外れたように、力が一気に抜けていった。




どん!という音をたてて、地面に倒れた。



「女の子が倒れたぞ!」




人々の騒ぐ声。

蒸し暑い気温。

少し止んだ雑踏。




目の前は暗転し、聴覚だけが私の中で生きていた。










「その子は、私が見よう」









その聴覚が聞き取った最後の音は、






あの人の、声。