…って、あれ…?




毒雨は…鬼には効かない。

もちろん半分といえど、私にだって効かない。




敵は鬼。


私を狙うなら、もっと別の術を使っても…





「…!ま、さか……」




頭の中に浮かんだ仮説に、私は思わず首を横に振った。


そんなこと…あるわけない。



そんなはず…ない。





「…どうした」



律希の声が、霞んで聞こえた。



あの時…私が、敵のつぶやく術が聞こえなかったら、


今頃律希は……






「なん、でもない…」




私の言葉に明らかに不機嫌になり、眉間にしわを寄せる律希。




「なんでもない?

じゃあ、なんでそんなにうろたえてる」





「本当に、なんでもないから、大丈夫!


…もう、帰ろう!うん!」




「…別に言いけど、なにがあった…」



「ほら、もう平井先輩も会議が終わる時間だし。


3人で帰ろーよ!」




無理矢理律希の腕を引く私。


後ろからおい!と聞こえたけど、聞こえないフリ。