「じゃ…律希も、またね」



「………なぁ」



「ん?」





振り向くと、少しうつむいている律希。


今日は…月が出ていない。



闇夜の中、彼の表情は見えなかった。





「お前、なにか隠してないか?」



「え?」



「昔、陰陽師と深く関わったことでも合ったのか?」



………え?


「……律希はどう、思ってるの?」



「……実際拷問にあったことがある、とか」




律希は頭が良いんだと思う。多分だけど。

私の今までの言動から…そう、察したんだと思う。



きっと律希から…私の表情は上手く見えていないと思う。

それが好都合だな、と思った。


きっと今の私は…変な顔をしている。




まるで、なにかに取り憑かれたかのように…恨みのこもった顔を。





「……律希は関係ない」



驚くほど冷たい声が出て…声の原点である私も少し驚いてしまった。



「そう、関係ないんだよ、安心して!

律希を責めたりはしないし、恨んだりもしない」



先ほどとは打って変わって、明るい声を出す。


私の変貌に律希も驚いているようで、ちょっと肩が動いていた。




「………律希は悪くないの。関係ないの。


だから…




必要以上の詮索は、やめにしよう?」





私は微笑む。

律希…ごめんね。



きっと、律希に話してしまったら。




私が壊れてしまいそうで、嫌なんだ。