「姿を現せ、妖!

ここにいることは分かってんだよ‼︎」




『……知らない知らない知らない知らない…

あなたたちなんて、知らない知らない知らない…』




「!そこか‼︎」



律希は右手を縦に振ると、その手には綺麗な日本刀が握られていた。


陰陽師特有の…妖力が込められた日本刀。



妖や明らかに人にはとは違う『異形』のものにしか効かない、そんな日本刀。





『怖い怖い怖い怖い

助けて助けて助けて助けて』




「…律希、声からして様子が…!」



「ああ…物の怪の中でも…特に厄介そうだ」




その言葉に私は胸が痛んだ。

…好きで物の怪をやっているわけじゃない。



妖だって、心を持っていて。

嫉妬、欲望、そして恨み…人間に似たドロドロとした感情が増幅することで、


人々に普通は害を与えない妖が、害を与えることになってしまう…その変わった後の妖を『物の怪』と呼ぶ。



物の怪になったのだって、きっと訳がある。



金鞠も物の怪化していたけど…



普通なら起きない、悲しくて残酷な過去が…


まだ小さな彼女を『物の怪』にしたのだから。