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────あ。
あー、もう。
まただ。
声を出す間もなく。
音を立てずに消しゴムが机から落ちて、小さく跳ねた。
わたし、肘に当たってすぐにものを落としちゃうんだよね。
シャーペンとか、消しゴムとか、ものさしとか。
机の上にある、筆記用具とかを。
うーん、本当に困りものだ。
テストの時なんて、絶対に先生に迷惑かけちゃうよ。
気まずいから、嫌なんだけどなぁ。
ぎりぎり届きそうな距離に思わず横着して、椅子に座ったまま。
ぐっと手を伸ばせば。
────とん。
わたしより先に消しゴムに手を伸ばした後藤くんの手に、指先が軽くぶつかる。
「あ、ご、ごめんなさい」
「ん」
「えっと、拾ってくれてありがとう」
いつも通り。
ぶっきらぼうな口調と、それから真逆の優しいそっとした手つき。
互いに目を合わせることはなく受け取って。
元の姿勢に戻り、黒板に体を向けた。

