「あの、ご、後藤くん」
初めて口にした君の名前。
こくり、と緊張を呑みこむ。
「なに」
「この消しゴム……」
確認のためにおずおずと顔を覗いても、目が合うことはなく。
「ないんだろ。やる」
淡々とした、だけどとても優しい言葉。
そっか、……うん。
きっと後藤くんは、いつもこんな風に誰かに優しくしてたんだね。
だって、わたしに消しゴムを切ってくれる前から、君の消しゴムはぼろぼろだった。
小さくて、角ばったこれが証拠だよ。
誰にだって変わりなく。
後藤くんは等しく優しくできる人なんだ。
わたし、誤解してたんだね。
こんなに怖い見た目の男の子だけど、……他の男の子とは少し違う。
「ありがとう」
「……別に。
たいしたことじゃねぇし」
今、初めて目が合ったよね?
わずかに表情が緩んだの、わたしの勘違いじゃないよね?
ねぇ、後藤くん。
わたしに笑ってくれたって、思ってもいいかなぁ?

