「────千菜ちゃん、あのね。
わたし、チョコレート、今は欲しくない」
「……」
「学校には持って来ちゃだめだよ……っ」
言え、た。
わたしの本当の気持ち。
心臓がどきどきして、きゅうと目をつむる。
すると、そのままふわり、と優しい香りに包まれた。
今、わたし、千菜ちゃんに抱き締められているの……?
「穂香はいつも周りに気をつかいすぎだよ」
「え、っと、ごめんなさい」
「でも、あたしもつかわせることしちゃってごめん。
穂香が気持ちよく友だちでいられる人でいたいから」
だから、言ってくれてありがとう。
そう囁いた千菜ちゃんの背中に腕を回す。
じわり、ぎゅう。
あったかいものが胸に広がった。
言ってよかった。
本当に、よかった。
教室の隅っこで。
当事者のわたしと千菜ちゃん、それから後藤くんしか知らない。
そんな小さな出来事だけど、わたしにとってはすっごく大切なこと。
きっかけをくれたのは、
「後藤くん、ありがとう」

