思春期ベリーライン





学校にお菓子は持ってきちゃいけない。

それは小学生の頃からの決まりで。



高校生になったら、許可がおりてるみたいだけど。



でも、わたしたちはまだ中学生だから。

本当はだめなんだ、けど。



千菜ちゃんが持って来てくれたのは、わたしのため。

わたしが喜ぶように、元気になるように。



そう考えてくれた。



……嫌だ、なんて言えないよ。



「穂香? どうかした?」

「えっと、ううん。
……なんでもないよ」



へらりと誤魔化すように笑って、ありがとうとチョコレートに手を伸ばした時。



「校則違反」



後藤くんが低い声で呟いた。



ちゅー、と牛乳のパックを飲みながらの冷たい視線。

身長高くなるわけだ、と関係ないことが頭をよぎった。



「そんなもん学校に持って来んなよ」



そんなもん、とはもちろん千菜ちゃんが持って来てくれたチョコレートのことで。

思わず表情が固まる。