私の部屋の前に座って、当たり前のようにスマホを弄ってる。


え、馴染んでる。

馴染んでるんだけど。



「……タ、カシ」


「詫びを入れにきた」


「や、詫びって、あの」



ずいぶん外にいたようだ。


鼻が真っ赤になっていて、ずびずびしきりに鼻水をすする音がする。



寒さを彼の姿で実感した。



「トウゼンだよな〜」


「何が」


「お前が限界になって。だって不倫だもん」


「……まあ、ね」


またおどけた口調。

変わってないな、とたった一週間なのに思った。




「もうちょっと真剣に俺は考えるべきだった」




くしゃりと、また悲しそうに笑う。


そして何かが足元にとんでもない勢いで飛んできた。


ガフン、と音を立てて。



「んがっ!?」


変な声をあげながら、足元に飛んできたものを確認。


「ぼ、ボストンバッグ?」


どうみてもカーキ色のボストンバッグだった。


ニ三泊するのに持ってこいな大きさのお手軽バッグ。



……いや、投げられても。



これなに?と戸惑う私に、彼はニヒルに笑った。