『あ、あの!』
俺はざわめきの声が大きくなる中、負けじと大きな声を出した。
クラスの視線が彼女から俺の方に注がれる。
『…確かに彼女は本当は違うクラスです。
きっと応用クラスでもトップの方だと思います』
俺の言葉にクラスの奴らが“じゃ、なんでここにいんだよ”と再び叫び始めた。
『もしかして振り分けの時は体調不良?』
『けど、北辰テストでそんな成績を取るくらいでしょう?
振り分けテストなんて簡単ですぐに解けたんじゃない?』
『だよねー』
近くに座っている、別中学の女達がそんなことを囁く。
『…俺が彼女に頼んだからです。
このクラスに入って欲しいって…』
俺の言葉に西山さんも顔を上げる。
『俺が塾でも一緒に居たいからって、そう彼女に頼んだんです』
“え、あそこ、カップル?”
“マジー!!”
様々な声が飛び交う。
『だから…俺の勝手でみんなに嫌な思いをさせてしまってすみませんでした。
そして、西山もごめんな』
俺がそう言うと彼女はもうすでに泣いていた。
『…ごめんね』
もう一度謝ると、彼女は首を横に何度も何度も振った。
『…私……』
『塾の行き、それから帰りも一緒に出来るから、勉強の間はお互いに我慢しよう』
俺の言葉に彼女はもう一度、涙を流した。
そして首を縦に振った。
『あーぁ…仲いいのはいいんだけどな?
まぁ…いいや、とりあえず西山はクラス変更するから、後で私のところに来なさい』
塾講師は少し照れた感じで、彼女にそう言った。
『はい…本当に申し訳ありませんでした』
彼女がそう言うと、大騒ぎしていたクラスのみんなも分かってくれたのか、もう何も言わなかった。
俺はへなへなと椅子に座り込んだ。
そんな俺を守もタケも加藤も背中をつついて、“やるじゃん”、そう褒めてくれた。
もちろん、彼女の顔はそれから授業が終わるまで一度も見れなかったけど。

