『もう…しないって…』
彼女は小さな声でそう言った。
隣の席だからかろうじて聞こえた、その言葉。
『…西山さんからはね』
俺もそう小声で答えた。
『………撤回してもいいですか?』
彼女の問いかけに、顔を上げると今にも泣き出しそうな顔をした彼女がいた。
『……うん』
俺がそう言うと彼女は一粒の涙を流した。
そして、笑った。
『…良かった』
彼女はそう言って、俺に笑ったんだ。
なぁ…守。
俺もお前と同じように彼女とぶつかって、それで分かったことがあるんだ。
俺は、彼女が俺の中に自然に入ってきたってこと。
たった一日、たった一日で、彼女は俺の中に入ってきた。
こうやって話すのは初めてで、こんな風にお互いの目を見るのは初めてなのに。
でも、俺はこの子のこの笑った顔を大事にしたいと思ったんだ。
またこんな風に隣で彼女の笑った顔を見たいと思ったんだ。
でも、絶対に彼女には言わない。
彼女の気持ちを受け取ることはしない。
だから、俺の中だけでいいから、彼女のことを好きと認めてもいいですか?
もし、それがダメなら。
メールだけは続けててもいいですか?
こうやって学校に来れば、一番近い席にいる、それだけは許してもらえますか?
なぁ…守。
俺はこれからもお前のこと、応援するから。
だから、この気持ちだけは俺の中で認めさせてください。
『よろしくね』
『…よろしく』
俺は笑った。
彼女も笑った。
これが、最後の俺の笑みになるとも知らずに、俺は君に笑ったんだ…

