Darkness † Marker 3  【降る雪は淡く…】


尚人はチラリ腕時計に視線をやると、

「随分時間が経っちゃったね。そろそろ出ようか」

会計伝票を手に、席を立つ。

気がつくと午後1時をとっくに回っていた。

「あ、津久見さん。今度お金返しに行きますから住所を…」

「いいよ、これは僕の奢(おご)り。この前のお詫びだよ」

「とんでもない、それは困ります!!」

裕一郎は慌てて言った。

「どうして?」

「どうしてって…空腹な所を助けて貰ったのに、その上奢ってもらうなんてとんでもないです!!」


「…………………ぷっ」


思わず尚人は吹き出した。

「えっ…何で笑うんですか!?」

「素直でいい子だな、と思って」

「素直でいい子だと、津久見さんは笑うんだ…」

「ごめん。知ってる人に似てたから、つい…じゃあ、笑ったお詫びに奢らせてよ。ね?」

「ぁ…………」

にこり微笑まれて、裕一郎はドキリとする。



(うわっ…オレが女だったら、絶対今ので落ちてるよ…)



この人の笑顔は《武器》だ…裕一郎は心密かに思ったのだった。

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