「ここはあんたの来る場所じゃない。帰るべき場所へ戻るんだな」
河村は部屋の隅に無言で立っている霊に声を掛けた。
すると蜘蛛の後ろをついて、男はうなだれるような姿勢で玄関へ向かうと、そのままドアをすり抜け姿を消す。
「あなたからしたら、アレくらいのものは気にも止めないってとこかな…それとも気にしないようにしてる?」
蜘蛛の出す糸が見えていた様子だから、かなり霊を見る力があるという事だ。
普通の人間なら蜘蛛が動き回っているのも見えないし、第一、霊の存在にすら気づかないだろう。
「僕には《霊》を祓ってくれる知人がいます。だからその人以外に霊的関わりを持つ事は、今までもそしてこれからもずっとあり得ない…」
「知人…あぁ、お寺の息子さんね。でも彼は他県に住んでいて、滅多に会う事はない。あなたが困った時に、すぐ駆けつけるのは無理だ…………いや、もしかするとそんな時にはあなたの事を気に入っている《霊》が手を貸してくれるのかな?」
皮肉めいた言葉を河村が投げかけると、瞬間、尚人の顔がカッと赤くなる。
(図星か…)
いくら河村とは言え、何でもお見通しとはいかない。
ちょっと鎌を掛けてみただけだったのだが、どうやら当たりだったようだ。
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河村は部屋の隅に無言で立っている霊に声を掛けた。
すると蜘蛛の後ろをついて、男はうなだれるような姿勢で玄関へ向かうと、そのままドアをすり抜け姿を消す。
「あなたからしたら、アレくらいのものは気にも止めないってとこかな…それとも気にしないようにしてる?」
蜘蛛の出す糸が見えていた様子だから、かなり霊を見る力があるという事だ。
普通の人間なら蜘蛛が動き回っているのも見えないし、第一、霊の存在にすら気づかないだろう。
「僕には《霊》を祓ってくれる知人がいます。だからその人以外に霊的関わりを持つ事は、今までもそしてこれからもずっとあり得ない…」
「知人…あぁ、お寺の息子さんね。でも彼は他県に住んでいて、滅多に会う事はない。あなたが困った時に、すぐ駆けつけるのは無理だ…………いや、もしかするとそんな時にはあなたの事を気に入っている《霊》が手を貸してくれるのかな?」
皮肉めいた言葉を河村が投げかけると、瞬間、尚人の顔がカッと赤くなる。
(図星か…)
いくら河村とは言え、何でもお見通しとはいかない。
ちょっと鎌を掛けてみただけだったのだが、どうやら当たりだったようだ。
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