津久見尚人は裕一郎が言った通り、確かに『いい雰囲気』を持っている。

ホッとすると言うか、傍にいるだけで居心地の良さを感じるのだ。

しかし…。

そう思うのは、何も人間だけではないらしい。


霊にも好まれる人間。


(依り系とは良く言い得た表現だな)


河村はそう思った。

「あの、話って何でしょうか」

渡された名刺を受け取りながら、尚人が口を開く。

「今日、如月に会いましたね?」

「…………………はい」


一瞬気まずい表情を浮かべた尚人は、そのまま視線をテーブルに落とした。

「彼に聞いたんですね」

小さなタメ息。

「いいえ…彼は何も私に話してはくれませんでしたよ。あなたに会った事すらね」

「え…」

「そんな事を言わなくても、長い付き合いから分かります。なにせ今の彼は、あなたの事しか頭にありませんからね。落ち込んで帰ってきた姿を見れば、一目瞭然だ」

言って、河村は苦笑した。

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