「君、この前ホテルのロビーで会った子だよね?」

そう話しかけられ、ボーっとしていた裕一郎はハッとなった。

「えっ………あ…つ、津久見さんっ!?」

「どうしたの、こんな寒空の下で。誰かと待ち合わせ?」

津久見尚人は不思議そうに首を傾げる。

「いえ、そういう訳じゃないんですけど。津久見さんこそ、どうしてここに?」

凄い偶然だと感動していると、

「この蝶がね、僕をここまで連れて来たんだ。君の…でしょ?」

指先に止まって羽根を休めている式神を渡された。


(あ…式蝶)


「はい、ありがとうございます」

裕一郎は自分の肩に河村から預かっている式神をとまらせると、立ち上がって礼を言う。

その瞬間。


ぐうぅ〜キュルル〜


お腹が恥ずかしいくらい大きな音で鳴った。

「うわわっ!!」

「ぷっ」

尚人は吹き出すと、彼の置かれている現状を察したのか、

「おいで。丁度お昼時だから、僕も何か食べようと思ってたんだ」

にこり微笑んで向かいのビルを指差すと歩き出した。

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