出かける裕一郎の姿を見送った河村は、机の上に積み重ねた書類の下から1通の封書を取り出した。
知り合いの興信所からの報告書である。
裕一郎には秘密で、津久見尚人の身辺を調べさせてもらった。
本当は式神を使えば簡単なのだが、写真も欲しかっので今回はやむ終えずそうしたのだ。
河村は封を切ると、書面に目を通す。
「何々…津久見尚人、年齢は23歳。N区在住で母と子の2人暮らし。父親は海外に単身赴任中…。元・鬼の目持ちの依り系で、霊視的能力はかなり高し。本人はその事について良くは思っておらず、普段は友人から贈られた《護身の指輪》を身につけ極力、霊との接触を避けて生活を送っている………」
それから報告書に添付されていた写真に目を通し、尻軽な口笛を吹いた。
「へぇ。結構いい男じゃねーの……ま、中身はどうだか知らないけどな」
これが可愛い家族を悲しませた男だと思うと、当然面白い訳がなく…。
「ふん、気に入らねー」
軽く鼻を鳴らすと、書類を封筒に戻し上着の内ポケットにねじ込む。
反抗的で気が強くて我がままな所もあるが、河村にとっては自慢の家族だ。
「あいつにあんな顔をさせる人間は、誰であろうと許せないんだよなぁ」
俺って親バカ。
河村は自分に突っ込むと、コートを手に事務所を出ようとした。
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