Darkness † Marker ３ 【降る雪は淡く…】

「何て顔してんだよ。どうして俺が裕を怖いと思わなきゃいけないんだ？お前は大切な家族なのに…」

言って、河村はクシャリと柔らかでクセのない少年の髪を撫でる。

誰に何を言われたのか…無理に聞き出さなくても、何となく彼には想像がついた。

でなければ、普段元気な裕一郎がこんなにも落ち込むはずがないからだ。


「よし。今日は仕事早終いして、今から美味いもんでも作って食うか!!」


河村はワイシャツの袖を捲ると、冷蔵庫の扉を開ける。

けれど少年は首を横に振って言った。

「変な事、聞いたりしてごめん。久司に気をつかわるつもりで言ったんじゃないんだ…」

「裕。あんまり何でも心の中に溜め込むなよ」

「大丈夫、そんな事はしないから……それじゃあ、まだ時間あるから、もう１件仕事に行ってくるよ」

無理に作ったぎこちない笑顔でそう言うと、裕一郎は台所を出る。


「………」


本人がそうしたいと言うのなら好きにさせてやろう…思った河村はそれ以上聞くのを止めた。

「だったらさっき流れてきたばかりの依頼FAXがあるから、それ頼む」

「FAXね」

裕一郎は窓際の複合機に近づくと、用紙に目を通す。

「５丁目の門脇さんか…場所も近いし内容もそう複雑じゃないから、夕方頃には帰って来れると思う」

「そうか。じゃあ、俺が相手先に連絡を入れておく。簡単だからと言って、気を抜くなよ…怪我するからな」

「分かってるよ…じゃあ、行ってきます」

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