それからの一週間は特に大きな事は起こらず、流れるように過ぎていく日々だった。
俺と克司は今日も部活だ。
剣道場は校舎から少し離れたところにあるので、渡り廊下を伝って、長々と歩いていかなければならない。
今日は暖かく、くすぐったくなるような風が、木々の合間から吹き込んでくる。
「なんか風ぬるいな」
「だな。三月だし春は近いかー」
克司は頭の後ろで両手を組み、俺に一歩近づいてくる。
「なぁ。ホワイトデーってどうすんだ?」
「どうって。なにも?」
「じゃあさ、四人でデートとかどうだよ。バレンタインの時みたいに」
「はぁ?」
この大馬鹿。
バレンタインの二の舞いをさせる気かよ。
「嫌だよ。お前らは両思いだろ。二人で出かけろよ」
「洋介と和歌は違うのか?」
「ちがっ……」
理性を保つ線が切れそうだ。
何なんだよ、コイツ。
鈍感にも程があるんじゃねぇの。
和歌が好きなのはお前だバーカ。
ああもう、ムカつくムカつく。
「俺達は違う。和歌は俺の事が好きな訳じゃねーの」
「ってことは洋介は好きなんだな?」
あああああ。
こんなバカの誘導尋問に引っかかるなど何たる不覚!
「あ、当たりだな。よしよし、俺が協力してやるからな」
うんうん頷く克司。
イヤ、結構ですから。ホント辞めろ。お前は余計なことすんな。
何より、お前に余裕ぶっこかれるのがムカつくんだよ。