悪戯心も手伝って、俺は手を伸ばして和歌の腕を掴んだ。
胸にはもどかしさもある。
いつまでも、克司の事ばかり考えてないで。
ちょっとはこっちを向け。ちゃんと俺の事を見ろよ。
「和歌」
「え?」
力を込めて、引き寄せる。
和歌の頬が赤く染まった気がした。
……でも、彼女は俺の腕の中には入らなかった。
和歌は咄嗟に腕を伸ばして、俺との距離をしっかりと確保する。
「何すんのよ」
「もうちょっとこっちを見ろよ」
「見ろって。……なんで」
「なんでって……」
耳まで真っ赤になって、声が震えてる。
いつも元気で明るい分大きく見える和歌が、ものすごく小さな女の子のように見える。
“俺の気持ち、知ってるんだろ”
そう言おうと思ったけれど、和歌があんまり怖がっているから手を離してしまった。
「……洋介?」
「実はそこにカエルがいたんだ」
「え? マジ? やだやだカエル嫌いっ」
マジビビリする和歌。
アホだ。この季節にカエルがいるわけ無いだろう。
「もう大丈夫。いなくなったから」
俺がそう言うと、和歌は安心したように笑った。
「なんだそっか」
ああ。何やってるんだ俺は。
少しは意識して欲しいだけなのに。
なんなんだよ、この空回り。



