そうだよ。
だから幸せなやつらなんか、勝手に悩ませとけばいいんだよ。
なんで一番傷ついてるお前が、そんなこと考えてんだよ。
口が悪いようだけど実際はお人良しで。
要領悪いんじゃねぇのバカって思うけど、そんな和歌が俺はやっぱりどうしても好きで。
「和歌」
「え?」
「遊びに行くぞ」
「はぁ?」
有無を言わさず、ポテトを数本取って和歌の口に突っ込む。
「むが。……ちょっと、洋介」
「俺、カラオケ行きたくなってきた。お前付き合えよ。ほら、腹ごしらえもしろ」
「だって、私家に帰んないと」
「一日くらいいいだろ。帰り送ってやるから。ほら、家に遅くなるって電話しろ」
「なによ、もう」
俺にせかされて、和歌は渋々電話をかける。
「あ、お母さん? 和歌だけど、友達とちょっとカラオケ行ってきてもいい?」
素直に内容まで話す和歌。
友達ね。まあ、間違いじゃないけどさ。
友達でも何でもいい。
お前があんな顔で泣く位なら、友達でもいいから助けてやりたい。
ああもう。
なんで俺までこんなお人好しヤローにならなきゃならねぇんだ。
笑えよ、和歌。俺の隣で笑ってくれよ。
俺のことを……好きになれよ。
「うん。じゃあね。……行ってもいいって。なら、ちゃんと食べるもん買ってくる。待ってて」
そう言って、和歌はレジの方へ向かった。
その背中に思う。
よくお前はあの時春香の背中を押せたよな。
俺だったらキツイな。
和歌をあきらめるのは、そう簡単には出来そうにない。



