「ねえ、あなた! あなたでしょう、お社の妖って?」
「いやおまえ、単刀直入すぎるだろう!」
朔の制止も聞かず、銀花は男の子の方へ小走りで向かっていく。
社裏の森に薄く積もった雪に、小さな足跡がつけられた。
どうするんだ、と、朔が焦った顔で猫目を見ると、猫目はにやにやと笑って銀花を見ていた。
ちっ、と舌打ちを一つして、朔は銀花を追いかける。
だが銀花はといえば、逃げ出した男の子を追ってもうずいぶん遠くまで行っていた。
「ねえ、待って! あたし、あなたを責めたり懲らしめたりするために来たわけじゃないの! 伝えることがあるのよ!」
銀花が叫ぶと、男の子が振り返った。
逃げる足を止めはしないが、その顔に迷いが浮かんだのを、銀花は見逃さなかった。



