届屋ぎんかの怪異譚





社の裏の森の中、樹に隠れるように、男の子が立ってこちらを見ていたのだ。



「こんなところにいたら危ないよ」と声をかける猫目にも反応せず、じっとこちらの様子を伺っている。



「村の子供か……?」



小さく呟く朔に、銀花は静かに首を振ってみせる。



「違うわ。妖が化けているのよ」


「なぜわかる」


「なんとなくでわかるでしょ」



わかんねえよ、という言葉は飲み込んで、朔は刀の柄に手をかける。


銀花との約束なので斬りはしないが、いざというときにすぐに動けるように。



だが、警戒する朔と反対に、銀花は呑気なものだった。