そう言って、銀花は不思議そうな顔の猫目に向き直った。



「猫目、この人は朔。昨日猫目の長屋に越してきたの。お隣さんだから、仲良くしてあげてね」



ものすごく嫌な奴だけど、と、銀花は小さく付け加える。



「何が、仲良くしてあげて、だ。上から言ってんじゃねえよ」



「うるさいわね。少なくとも江戸の生活は私の方が十五年は先輩だもの。わからないことがあったら訊いてくれてもいいのよ?」



「残念。俺も十年前までは江戸に住んでたから、おまえに訊くことなんてないね」



勝ち誇ったように言う朔を、銀花が悔しげに睨みつけたところで、


猫目が「ちょっと二人とも、その辺にしとこうか」と間に入った。