――とくにわたしと山吹はね、初めて出会ったのがいつだったかなんて、覚えてもいないくらい幼い頃からずっと一緒だった。
わたしの父母は退治屋でね、旅から旅の生活をしていたんだが、赤子のわたしを連れて退治屋の旅はできんと思ったのだろう。
父母は赤子のわたしを江戸の叔母夫婦に預けた。
五つになったら迎えに来る、と言ってね。
叔母夫婦は江戸で医者をしていてね、隣には薬屋の夫婦が住んでいた。
そこの一人娘が山吹。
おてんばで、男勝りな女の子でね。
わたしは幼い頃はおとなしいたちだったから、山吹はわたしを子分みたいに連れまわして、よく一緒にいたずらをしたもんだ。
そのいたずらで忍び込んだお武家の娘が、白檀だった。
そりゃあもう、天女かと見紛うほどに綺麗な娘だった。
そんな綺麗な娘さんが、お武家のお屋敷の蔵なんかに籠って一人泣いていたものだから、わたしも山吹も驚いたよ。
どうしたんだって聞いたら、外を自由に歩いて回りたい、一緒に遊べんでくれる友だちがほしいって言うものだから、わたしと山吹でこっそり白檀を連れだしたんだ。