「答えられないなら黙って見てろ。……俺は、こいつを殺すために、この十年を生きてきたんだ。邪魔をするならその狐ごとおまえも斬る」



ズキ、と、胸を刺すような痛みを感じて、銀花は顔を歪めた。



心を開いてくれたと思った。

仲良くなれたと思った。

笑ってくれることが嬉しかった。


けれど今、はじめて朔を怖いと思った。


風伯を斬ろうとしたときも、怖いとは思わなかったのに。



「朔……!」



こらえきれずに叫んだ声は震えていた。


呼んで、どうしたいのだろう。

戦うのをやめてくれと言いたいのだろうか。

猫目にそんなことを言わないでくれと言いたいのだろうか。


どちらも違う気がした。



――そうだ。


何かを言いたくて呼んだわけじゃない。


呼びたいから、呼んだ。

そうしなければ、このまま朔がどこかへ行ってしまいそうで。



銀花の声に、猫目と朔が振り返った。


二人の目が、一瞬、迷うように揺れる。



――そのときだ。