「今様、無事だったのね……」
火車の後を追う今様と二藍を風伯の風に乗って追ってきたはずなのに、この場所に二匹の姿がないことがずっと気になっていたのだ。
その銀花のつぶやきに、「ずっと隠れて猫目の指示を待ってたんだよ」と、どこから現れたのか、いつの間にか銀花の足元にいた二藍が誇らしそうに言った。
そういえば、つい先ほど猫目が二藍の名を呼んでいた。
朔と晦の戦いに気を取られて聞いていなかったのだ。
銀花と二藍の見守る先で、朔は鋭い目を猫目に向ける。
「おまえの訊きたいことなんて、だいたい予想がつくけどな。それを訊いてどうする?
もしあの女が生きていて、こいつと共に行動しているとして。そうしたらおまえは俺や銀花の敵にまわって、こいつの仲間になるってのか?」
どうなんだ、と、詰問する朔に、猫目は答えない。
あの女とは誰だろう。
猫目の訊きたいこととは何だろう。
銀花はなにもわからない。
わからないけれど、出会った頃の冷たい態度を取っていた朔よりも、
ずっとずっと冷え冷えとした空気をまとった今の朔を見ていられなくて、銀花はおもわず駆寄りそうになりのをぐっとこらえた。



