届屋ぎんかの怪異譚




単に人に憑依して体を操り首をくくらせているわけではない。


それよりもさらに厄介だ。


おそらくは絶望から首をくくって自死した者が転じた妖で、人に憑き、その人の心の奥底にある不安や後悔、負の感情を何倍にも増幅させて、その人自身に死を選ばせる妖。


憑依した者の心の奥深くまで入り込むため、その人との結びつきが強く、祓うのが難しい。



どっちでもない。

人でも、妖でもない。


その半端さ故にどちらにも遠ざけられた銀花の心に、その痛みは深く根付いている。


朔や猫目がどれだけ、半妖であることなど気にしないと言っても、その言葉一つで取り去ることなどできないほど、その棘は深く刺さっている。



この鬼は、そこを突いたわけだ。



死にたい、死なせて。


そう呟きながら朔を無視して立ち上がろうとする銀花の手を、朔は掴んだ。


そしてそのまま引き寄せると、細い体を強く抱きしめる。