届屋ぎんかの怪異譚




「銀花」



無駄とわかっていてながら、朔は呼びかけた。



返事の代わりに、銀花の両目から溢れる、涙。


桜色の唇が震えて、朔を見ているのに朔を映さない瞳が揺れた。



「……し、ななきゃ……」



弱々しい声が朔の耳に届いた。

いつもは高く明るく響く彼女の声が、ひどく怯えて震えている。



「……死にたい、死ななきゃ……ひとりは、いや……」



「銀花、おい」



「どっちにもなれないのは、もういや。どっちにも嫌われるのは、もう、いやなの……」



ぶつぶつと、誰に言うでもなくただこぼれ落ちるその言葉を聞いて、なるほど、と朔は呟いた。



(なるほど、あれはそういう妖か……)