「ええ、もちろん。萩によろしくね!」



かずらに手を振り、銀花は人ごみを抜けてもと来た路地を走っていく。


結局朔の分に何か買って帰ることができなかったな、と残念に思いながら、弥吉の家の前まで来た、そのとき。



「――くそっ! 待ちやがれ!」



朔の怒鳴り声と共に、バタバタと走り回るような足音が銀花の耳に届いた。



どうしたのだろうか。

まさか、弥吉に何かあったのだろうか。



銀花は慌てて戸を開けた。



目に入ったのは、白い影と、蒼炎舞う刀を構えてそれを追う朔だった。



影はまっすぐ銀花めがけて飛んでくる。


輪郭がぼやけた、亡霊に似たそれは銀花を見た。


ぼんやりとして顔もはっきりとはわからないが、たしかに銀花と目が合った。



「馬鹿! 逃げろ!」