辛いけど、三吉くんの笑顔が消えるのはもっと辛いに決まってる。

彼の悲しい顔は見たくない、最後まであの温かい笑顔を見ていたい。



「お母さんのせいじゃないよ。 だからお願い、泣かないで。 泣かれるのが1番辛いよ」



子供が親よりさきに死ぬのって、1番の親不孝なんだよね。
だから、そんな親不孝をするよりもまえに、たくさん親孝行をしておこう。



「莉子、元気に産んであげられなくてごめんなさい……」


「どうしてそんなこと言うの? 私、お母さんとお父さんの娘で、希子のお姉ちゃんに産まれてこれて嬉しいよ。 笑って、お母さん」



そう言葉をかけると、お母さんは涙を拭って『そうね』と優しく笑った。



「ねえ、いつくらいまでなの?」

「……桜が咲くとき、くらいかしら」



お母さんは震える声でそうつぶやいた。
お母さんってば、遠回しすぎだよ。

春くらい、なのかな……。