数学の授業が始まって、15分。


目のまえに座る三吉くんの頭は、上がったり下がったり。
眠たいのか、うつらうつらしてる。


そんな姿がおかしくて、つい、クスッと笑ってしまう。




……ん? なんだろう。


窓側の壁に沿って伸びてくる三吉くんの左腕。
左手に握られていた紙をあたしの机のうえに置くと、左手はすぐに戻った。



やぶかれて不恰好なルーズリーフの切れ端をゆっくりと開く。



そこにはミミズみたいな文字で、ただひとこと。
【眠い】という、ふた文字。



眠ってしまいそうななか書いていたからなのか、字がひょろひょろっとしていて、本当に眠いことが伝わってくる。



【寝そうになってたら、起こしてあげる】と紙に書く。
そして先生が黒板を見ているうちに、三吉くんの左肩をトントン、と叩いてみる。