「凛ちゃんぼけっとしてるから、地震なら脇に抱えて逃げようかと思っちゃったー」

そうケラケラ笑う宮地さんは、本当にいい人だと思う。
ただのお荷物でしかない私に、飽きずに一生懸命に仕事を教えてくれて。私がやりきれない仕事を手伝ってくれて。
要領が悪い私にイライラした顔ひとつ見せずに、何度も同じ事教えてくれる。

私が今できる仕事は少ないけれど、それでも楽しいと思えるのは、宮地さんのおかげだ。
妹がいるって言ってたから、そういう感じで見てくれてるのかなって思うと嬉しくなる。

女子社員に目の敵にされちゃうほど綺麗な田坂さんよりも、私は宮地さんの方が好き。

控えめなメイクも、スラッとしたスタイルも、ふわふわの綺麗なお姉さんの定番の髪型も。
いつかこんな風になりたいなぁと思わずにはいられない。

やっぱり髪、伸ばしてみようかなぁ。

「喫煙室のガラスの事、父に言ってみますね」

そう言うと、宮地さんは「えっ、社長に?!」と驚いた。

「だって、こっちも気が散っちゃうし」と答えると、宮地さんは少し考えた後頷く。