バレンタイン戦線異常アリ


そのまま駅の構内に入って、トイレ前の人気の少ない区画の壁に背中を預ける。

短距離なのに息がゼイゼイする。運動不足だな。高校入ってから帰宅部だったもんなぁ。

洋介の方は息も切れてない。
肩で息をする私を見つめながら落としたのは、私の胸を暖かくするような言葉。


「……頑張ったな。スッゲ格好良かった」

「うん」


悲しいけど、嬉しい。
きっと今頃、どっちからかは知らないけど告白して、克司はデレデレになって、二人でデートを楽しむだろう。

切ない失恋バレンタイン。

だけど、こんなふうに格好つけられる自分は嫌いじゃない。


「ところで俺には無いのか。チョコ」

「はい?」

「和歌からのチョコが欲しいなぁ」


わざとらしく、洋介が言う。
ないことないけどさ、と私はカバンの中からもう一つ包みを取り出した。


「はい。……でも、食べると後悔するかもよ」

「なんで?」


洋介がすぐさま包みを開けて、ちょっと形の悪いチョコを口に放りこむ。
そしてすぐに、……むせた。


「なんだこれ、げほっ、辛い! いや、しょっぱい? なんだよこの謎のミックス」

「トウガラシと塩コショウを入れてみたのよ」

「お前、ひょっとして、あいつらに渡したのも……」

「そうだよ。今日一番の不幸なのは私だよ。これくらいの意地悪はいいでしょ」