「春香の好きな人って……」


私の言葉に、春香が目を見張る。

聞かなきゃいい。
そうすれば春香は自分の気持ちなんか絶対に言わないし、もし克司に告白されたって私との友情をとるだろう。

春香はそういう子だ。
自分の気持ちより、私の気持ちのほうを大事にする。

だけど、それでいいの?

嘘つかれたままで、私も黙ったままで、それで本当にこれからも親友だって言えるの?

考えただけで背筋が冷えた。

そんな友情なら要らない。
私は、……私は。


「克司なの? 春香、克司が好きなの?」

「……和歌」


春香の顔がこわばる。

問い詰められてうまく嘘をつけるような子じゃない。
目を泳がせながら答えられずに俯いた。

ああ。
最後通告を言い渡された気分。


「ご、ごめんね和歌」

「なんで謝るのよ」

「和歌が克司くんのこと好きなの知ってて。……でも、あたし、告白する気なんかないから」


最期の方には聞き取れないほど小声になった春香。

分かってるよ。
春香に悪気が無いことくらい。

だけど、克司は私じゃなくて春香が好きなんだよ。

どうしたらいいの。
なんだか私、おいてきぼりにされたような気分だ。

悲しいの?
それとも悔しいのかな。

自分の気持ちが分からない。