「……そんなに友達と別れたくないのか」


大作は、有希が恋をしているとは思っておらず、大人の都合で振り回してしまうことに胸を痛めて弱々しくつぶやいた。


そんな大作を桂子と隆史は黙って見つめていた。



確かに。

仲の良い友達と別れることも辛いだろう。


だが、有希の涙の原因は「恋」だと、2人は確信していた。



哲也が有希を送ってくるようになり、時折、有希が女の子らしい柔らかな表情をするようになっていたことに、桂子は気づいていた。


そして、隆史の所属する野球部の練習場所はサッカー部の隣り。

ひとつ年上の姉とケンカ相手の関係が変化していたことに、隆史も気づいていた。