睡恋─彩國演武─


それでも千霧は、藍を拒絶しなかった。

言葉を受け入れ、抱き締めてくれた。


『大丈夫だよ』


その一言に、どんなに救われたことか。

そう。

幾千の言葉より、たった一言、そう言ってくれる人を求めていた。

ずっと『居場所』が欲しかったんだ。


“想定外”な未来を、千霧となら手に入れられる気がした。

だから、その瞳から目をそらしはしない。

朱雀として、藍として、今は大切なものがあるから。


「答えを──見つけたのね。それなら、アタシ達はおとなしく送り出すしかないわ。ね、みんな!」


年長の娼年が皆に言うと、その場にいた娼年達が一斉に藍に向かって押し寄せた。


「ええ。アイ姐さん、私達はいつも、姐さんの味方ですからね!!……お元気で」


「アイ!アンタのこと、絶対忘れないわ!」


「絶対また会いに来て下さいよ?」


もみくちゃになりながら、藍も千切れそうな声で応える。


「ありがとう──…」