「しーのーづーかッ!」


 階段の駆けのぼり、最後の一段を飛び上る。

 着地した先、屋上の扉の前で篠塚はふんわりと幸せそうに笑っていた。

 泣いているだろうと予測してやって来た俺は、動揺してしまう。


「え、まさかオーケーだったのか?」


 だって俺は振られたとばかり思っていた。だ

 からこうして、篠塚をなぐさめるために上がってきたのに。


「ごめん、篠塚」


 決めつけてしまったことを謝罪すると、篠塚は違うことを責めてきた。


「振られたよ。もう、まさか聞いてたの?」

「悪い」


 篠塚に告白したことを知っている風の俺に、少し膨れて睨んでくる。


「じゃあ、なんで笑ってんだよ」


 怒っていても、振られたと言っていても、篠塚はどこか笑っているように見えた。


「嬉しいから。だって、絶対嫌われると思ってたんだよ。気持ち悪いとか、そういう風に言われたりするんだと思ってた。だから、ずっと黙ってた。嫌われたくないから」


 壁に背を預け、微笑みながら語り出す。

 屋上の扉にはめられた磨りガラスから、温かい光が差し込む。

 砂色の光は、空気中を漂う埃を浮かび上がらせる。

 キラキラと光るその様が、きれいだった。

 美しい青空さえも、結局のところは塵による光の散乱の賜物なのだから。