「稲葉、どのラッピングがいいと思う?」


 コンビニ内にあるバレンタインコーナー。

 その棚に飾られたラッピングセットの前に立ち、稲葉に問いかける。


「いや……俺に聞かれても」


 据わりが悪そうに、きょろきょろと辺りを見渡してバレンタインコーナーから目をそらす。


「恥ずかしがってんのよ。別に下着売り場にいるわけでもないのに」

「しっ、下着……!」


 一瞬にして、稲葉の耳が真っ赤になった。

 レジのすぐ近くだったのが災いして、レジのバイトがくすくすと笑う。


「じゃあ、コレとコレとコレとコレん中だったら、どれがいい?」


 仕方なく、少しでも稲葉が選びやすいように対象を絞って問う。

 私が指差したのはどれもボックスタイプで少し他のよりも値の張る、いわゆる本命チョコ用のラッピングだ。


「え〜っと……じゃあ、これ」


 ラッピングに本命用とか義理用とかがあることを知らないのか、稲葉はなんの疑問も口にせず選び取った。

 それとも、ただ単にバレンタインコーナーから離れたいのか。