今でも思い出す、小学校最後の運動会の日。

 雲一つない秋晴れの下で、わたしは応援団の赤いハチマキをしていた。

 初めての応援団にわたしは張り切って、午前中だけで肌は真っ赤に焼けていた。

 きっと、わたしの顔も真っ赤だったと思う。

 お昼の休憩時間。

 みんなが家族のもとに走って昼食を摂っている間、わたしは運動場に運んだ自分の椅子でお弁当を食べていた。

 そこはテントもなにもなくて、遮るもののない太陽は容赦なく日差しをわたしに降り注ぐ。

 食欲がなく、少しだけ気分が悪かった。

 もしも、お母さんかお父さんが来てくれていたら、日陰に広げたレジャーシートの上で休むこともできたんだろう。

 でも、わたしは一人だった。

 相変わらず仕事が忙しい両親に、もう六年生なんだから行かなくったって平気でしょ? と聞かれたら、頷くしかなかった。

 六年生だけじゃなく、一年生のときからずっと来てないとしても。


『舞!』


 あのとき、愛ちゃんはなんでわたしのところに来たんだろう。

 なんで、わたしのところに来てくれたんだろう。

 お父さんが迎えに来て、お弁当を食べに行ったはずなのに。

 でも、愛ちゃんは来てくれた。

 一人でお弁当を食べているわたしのところに来てくれた。

 そのことが、涙が出るほど嬉しかった。

 だから、わたしはすっかり気が抜けてそのままパッタリと倒れてしまった。


『舞、大丈夫?』


 愛ちゃんに負ぶわれて、わたしは保健室に運ばれる。

 ゆらゆらゆらゆら愛ちゃんの背中に揺られながら、わたしは幸せな心地だった。

 大好きだよ、愛ちゃん。