一瞬で考えを巡らせると、マーカスは小さく舌打ちした。

あの女。

マーカスは、ファルに熱い視線を送っていた王女リラの物欲しそうな横顔を思い出しながら唇を引き結んだ。

「俺の部屋に来い。ドン臭いファルの代わりにあいつの思いを代弁してやる」

マーカスは、まるで自分が兄のようだと思いながら夜空を仰いだ。

◇◇◇◇◇◇
翌朝。

マーカスの部屋で眠り込んでしまったシオンは、目が覚めて焦った。

「な、な、なんでっ!?」

何故かマーカスの部屋にファルがいて、気難しい表情でこちらを覗き込んでいたのだ。

慌てて部屋中を見回すも、マーカスの姿はない。