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リーリアス帝国、王都リアラ。

「鞍と鐙は騎馬隊の数だけ出来上がった」

ファルの部屋の大理石の机で地図を見ていた香は、入り口から声をかけたマーカスを見て頷いた。

「分かった。見せて」

この世界には馬具が充実しておらず、せめて鞍と鐙の製作を、香はファルに提案した。

本来なら、拍車も欲しいところだが、ぶっつけ本番でそれを使うのは些か不安があるし、かといって短時間の訓練で、馬が拍車の刺激に慣れるとも思えず断念した。

鞍と鐙の試作品は、現代のものと比べれば随分と簡素なものになってしまったが、日数的に余裕がなかった。

でも、いい。

あるとないでは、大違いだ。

ファルの部屋を出て列柱の間の廊下を抜けると、中庭をつっきった先の訓練場の入り口に、ズラリと鐙付きの鞍が並べられていて、香はそのうちのひとつを手に取った。